
今、日本の中小企業は、静かな、しかし極めて深刻な危機に直面しています。経営者の高齢化と後継者不足により、素晴らしい技術や、地域で愛されるお店が、黒字にも関わらず廃業せざるを得ない「大廃業時代」が目前に迫っているのです。
この国家的課題に対し、一つの光明となるのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。
まだ、ものづくり補助金やIT導入補助金ほど広く知られてはいませんが、私たちは、この補助金こそが、これからの日本の中小企業にとって最も重要な制度の一つになると確信しています。この記事では、会社の未来を託された後継者や、新たな挑戦を考える経営者様が、このチャンスを掴むための考え方を解説します。
なぜ今、「事業承継」が日本の最重要課題なのか?
帝国データバンクの調査によれば、2023年の中小企業の後継者不在率は、依然として50%を超えています。これは、2社に1社が「会社を畳む」リスクを抱えているということです。
長年培われた技術、守り抜いてきた暖簾(のれん)、そして従業員の雇用。これらが失われることは、単なる一企業の損失に留まらず、地域経済、ひいては日本全体の国力低下に直結します。
この危機的状況を打開し、価値ある事業を次世代に繋いでいく。そのために、この補助金は設計されています。
「事業承継・引継ぎ補助金」とは?(3つのチャンスを掴む制度)
この補助金は、単に「会社を引き継ぐこと」だけを支援するのではありません。事業の承継をきっかけとした、企業の新たな挑戦を後押しする、大きく分けて3つのチャンスを提供してくれます。
① 後継者による「第二創業」を支援 親から子へ、あるいは従業員へ事業を引き継ぐ「経営者交代」のケースです。後継者が、先代の事業を守るだけでなく、時代の変化に合わせて新しい事業を始めたり、思い切った業態転換に挑んだりする際の、新商品の開発費や、新たな販路開拓の費用などが支援されます。
② M&Aによる「事業の引継ぎ」を支援 後継者がいない企業を、外部の企業や個人が引き継ぐ「M&A」のケースです。買い手側が、M&Aの専門家に支払う仲介手数料や、デューデリジェンス(企業調査)の費用など、M&Aに不可欠な経費を支援してくれます。
③ 承継後の「革新的な挑戦」を支援 これが、この補助金の最も重要なポイントです。事業を引き継いだ後、既存事業を廃止して新たな挑戦をする際の「廃業費」や、生産性を向上させるための「設備投資」、業務効率化のための「システム導入費」など、承継後の成長を加速させるための投資を幅広く支援してくれます。
「守りの承継」から「攻めの承継」へ ― 補助金活用の思考転換
事業承継には、二つの姿勢があります。
- 「守りの承継」:先代から受け継いだ事業を、ただひたすら維持しようとすること。
- 「攻めの承継」:事業承継を、会社を生まれ変わらせる絶好の機会と捉え、新たな価値創造に挑戦すること。
言うまでもなく、未来を切り拓くのは「攻めの承継」です。そして、この補助金は、まさにその「攻めの承継」に挑む経営者のためにあります。
私たちFSPは、事業承継を控えた2代目、3代目の経営者様こそ、このチャンスを最大限に活用すべきだと考えています。
先代の想いを引き継ぎつつ、新しい時代の「価値の旗」を掲げ直す。そのためのブランディング戦略は、円滑な事業承継と、その後の成長に不可欠です
まとめ
「事業承継・引継ぎ補助金」は、来るべき大廃業時代に対する、国からの強力なメッセージです。
「事業を、守るな。変えろ。その挑戦を、支援する」と。
これは、単なる延命措置のための補助金ではありません。
廃業の危機を「成長の好機」へと転換し、次世代の経営者が新たなスタートを切るための、未来への投資制度です。
今はまだ、一部の意欲的な経営者が活用するに留まっているかもしれませんが、数年後には、会社の存続と成長を考えるすべての経営者にとって、「知っていて当たり前」の新常識となっているでしょう。


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