ワークショップを開き、全社員の想いを込めて、素晴らしい経営理念(パーパス)を、策定した。社長であるあなたは、満足感と、高揚感に包まれていることでしょう。
しかし、本当の挑戦は、ここから始まります。 その、生まれたばかりの理念を、ただ、朝礼で発表し、ポスターにして、壁に貼るだけでは、社員の心には、決して、浸透しません。一週間もすれば、それは、ただの「壁の飾り」となり、社員の日常から、忘れ去られていきます。
理念浸透は、「伝達」ではありません。「参加」です。この記事では、トップダウンの“伝達”ではなく、社員一人ひとりを“巻き込み”、理念を「自分ごと化」させるための、具体的な3つの「仕掛け」を解説します。
なぜ「トップダウン」の理念は、社員の右耳から左耳へ抜けていくのか?
社長が、どんなに熱い想いを込めて、理念を語っても、それが一方的な“お説教”に聞こえてしまうのは、なぜでしょうか。
- 「やらされ感」が、心を閉ざすから
人は、他人から与えられた言葉よりも、自らが見つけ出した言葉を、大切にします。トップダウンで与えられた理念は、社員にとって、「社長の言葉」であり、「会社のルール」ではあっても、「私たちの想い」には、なりにくいのです。 - 「日常業務」との、繋がりが見えないから
「世界を、もっと豊かに」という、壮大な理念を聞かされても、現場で働く社員は、「で、明日の私の仕事と、それが、どう関係あるの?」と感じてしまいます。理念と、日々の業務の間に、橋が架かっていないのです。
理念を、社員の“自分ごと”にする「3つの仕掛け」
仕掛け①:「対話」の仕掛け ― 理念を“マイ・ストーリー”に変換させる
理念浸透は、「対話」から始まります。月に一度、あるいは、週に一度、チームミーティングの時間に、5分だけ、理念について語り合う時間を、設けましょう。
- テーマ例:「今週、私たちのバリュー(価値観)である『挑戦』を、体現した仕事は、何だった?」
- 進め方:メンバーが、一人ひとり、自分の経験を元に、「私にとっての『挑戦』とは、〇〇の仕事でした」と、“マイ・ストーリー”として、語り合います。 この対話を通じて、抽象的だった理念の言葉が、具体的な、手触りのある物語へと、変わっていきます。
仕掛け②:「行動」の仕掛け ― 理念を“日々の口ぐせ”に変える
次に、理念を、いつでも、どこでも、意識できる「ツール」を作ります。それが、「行動指針(クレド)」を記した、名刺サイズのカードです。
- クレドカードの作成:「私たちは、〇〇な時、△△します」といった、具体的な行動レベルの言葉に、理念を“翻訳”し、カードにして、全社員に配布します。
- 日常での活用:会議の冒頭で、クレドを唱和したり、上司が部下を褒める時に、「今の行動は、うちのクレドの、〇〇そのものだね。素晴らしいよ!」と、クレドの言葉を“口ぐせ”のように、使ったりします。 これにより、理念が、特別なものではなく、日々の仕事の、当たり前の「共通言語」へと、変わっていきます。
仕掛け③:「承認」の仕掛け ― 理念の実践を“会社の宝”にする
最後に、理念に基づいた、素晴らしい行動が、きちんと「見つけられ」「褒められ」「評価される」仕組みを作ります。
- サンクスカード制度:クレドを実践した仲間に、感謝の気持ちを、カードで送り合う。
- 月間MVP表彰:売上などの数字だけでなく、「今月、最も、私たちの理念を体現した人」を、全社員の前で表彰する。
- 人事評価制度への組み込み:理念やクレドの実践度合いを、人事評価の、正式な項目の一つとする。
理念を実践した人が、きちんと報われる。この「承認」の仕組みがあって初めて、理念は、会社に、深く、そして、永続的に、根付いていくのです。
まとめ
理念浸透とは、社長の想いを、社員の頭に、無理やり「インストール」する作業ではありません。 それは、社員一人ひとりの中に、すでに眠っているはずの「良心」や「誇り」と、会社の理念を、結びつけてあげる、丁寧な“対話”のプロセスです。
「対話」で、自分ごと化し、「行動」で、習慣化し、「承認」で、文化とする。
この、地道で、しかし、着実な「仕掛け」の積み重ねが、あなたの会社を、社長一人が、旗を振るだけの一人相撲の組織から、全社員が、同じ方向を向いて、自発的に進む、一枚岩のチームへと、変えていくのです。
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