
会社の将来を想い、頭をよぎる「事業承継」という、重い言葉。長年、我が子のように育ててきた会社を、どう次世代に託していくか。それは、経営者にとって、最後の、そして最大の仕事です。
「そろそろ、顧問税理士に相談して、株価の計算でもしてもらうか…」
「後継者候補の息子と、一度、ゆっくり話すべきだろうか…」
多くの方が、まず、そうした具体的な「手続き」や「人選」から、考え始めるかもしれません。
しかし、もしあなたが、会社の“魂”までをも、次世代に正しく引き継ぎたいと願うなら。その前に、たった一つだけ、やっておくべき、もっと重要で、もっと本質的なことがあります。
なぜ「税理士への相談」が、最初の一歩ではないのか?
もちろん、事業承継における、相続税対策や、自社株の評価といった、財務・税務の観点は、極めて重要です。そのために、信頼できる税理士への相談は、絶対に欠かせません。
しかし、考えてみてください。それらは、あくまで、事業承継という壮大な物語の「手続き(HOW)」や「評価(WHAT)」の部分です。
もし、その物語の核となる「目的(WHY)」、つまり、「なぜ、この会社は、これからも社会に存在し続けるべきなのか?」という問いへの答えが、曖昧なままだとしたら、どうでしょうか。
どんなにスムーズに株式が承継されても、そこに“魂”がなければ、会社は、やがて進むべき道を見失い、衰退していってしまうかもしれません。
事業承継で、本当に“承継”すべきものとは何か?
事業承継とは、単に、株式や、工場や、顧客リストといった、目に見える「資産」を引き継ぐことではありません。
本当に承継すべきもの。それは、会社の歴史の中に、そして、創業者であるあなたの“心”の中にだけ存在する、目に見えない、最も尊い資産。
すなわち、会社の「理念」や「価値観」、そして「存在意義」です。
- なぜ、あなたは、この会社を始めたのか。
- どんな困難を、どんな信念で、乗り越えてきたのか。
- お客様や、社員に対して、何を一番大切にしてきたか。
この、あなたの「想い」こそが、これまで、あなたの会社を、幾多の困難から救い、成長させてきた、力の源泉のはずです。
最初にやるべき、たった一つのこと ―「会社の“魂”を、見える化する」
だからこそ、事業承継を考え始めたら、最初にやるべきこと。それは、この、目に見えない「会社の魂を、誰もが分かる形に“見える化”する」作業です。
これは、私たちが、全てのブランディング支援の、まさに原点としているプロセス、「想いの糸(MI – Mind Identity)」を紡ぎ出す作業そのものです。
後継者候補がいるのなら、その相手と、膝と膝を突き合わせて。まだいないのなら、自分自身の半生を振り返りながら、以下の問いに、真剣に向き合い、その答えを、一つ一つ、言葉として書き出していくのです。
- 我が社の使命(ミッション)は、何か?
- 我が社が目指す、未来像(ビジョン)は、どんな景色か?
- 我が社が、絶対に譲れない、価値観(バリュー)は、何か?
この作業によって、これまで、あなたの中にしか存在しなかった、暗黙知としての“想い”が、誰もが共有できる、明確な「旗」へと変わります。
まとめ
事業承継とは、会社の「身体(=資産)」を、次世代に託すことです。しかし、その前に、会社の「魂(=想い)」を、明確な形にしておかなければ、魂なき身体だけが、歩き出すことになってしまいます。
まず、自社の「魂」を見える化し、明確な「旗」を掲げること。 それができて初めて、その旗を託すにふさわしい「後継者」は誰なのか、そして、その旗と共に、どれだけの「資産」を引き継ぐべきなのか、という、次のステップの話が、意味を持ってくるのです。
この「魂の承継」こそが、先代の想いを継承しつつ、新しい時代に合わせたブランドへと変革する、成功する事業承継の、最も重要で、最も確実な、最初の一歩なのです。


まずは「無料個別戦略診断」で、
現状と可能性を客観的に見つめ直すことから始めてみましょう 。